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「Clear」の感想/誰かを愛せる貴方は優しい 

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(C)MOONSTONE

MOONSTONEより発売された恋愛ADV『Clear』の感想記事です。

本作は主人公の性格やモノローグの文体に癖があるものの、テーマに共感できる人であれば”忘れられない名作”たり得る作品……という印象です。
癖も「刺さる人には刺さる」タイプのものであり、自分はむしろその癖の部分を好んでいます。

OPの歌詞に本作の方向性はだいたい詰め込まれているので、気になった方は取りあえずOPを聞いてみてください。

※構成上の都合(ネタバレ含む感想がない)で、今回「ネタバレを含まない感想」を作品紹介後の追記に畳んでいます。

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☆公式サイト

https://www.moon-stone.jp/product/ms06/06_index.html

 

☆製品概要/主要スタッフ(人名は敬称略)

公式ジャンル:恋愛ADV
発売日:2007年8月24日
制作:MOONSTONE

企画/シナリオ:呉
メインキャラクターデザイン:Mitha
サブキャラクターデザイン:えんどり
原画:Mitha/成瀬守/稲垣みいこ/えんどり
CG:かやか/うどん粉/ヤマカゼ/ひなたなお
背景:さざんか
BGM:AngelNote
作中ムービー:癸乙夜(Mju:z)
プロデュース:恋純ほたる
メインヒロインCV:
行野無月:水瀬沙季
月村美姫:観村咲子
岡本ののか:大野まりな
本町春乃:草野花恋
宮城野紗由:遠野そよぎ

 

☆公式のあらすじ

全てが懐かしかった。
鼻をくすぐる潮の匂いが。
セミの音。
照りつける日差しに視界が真っ白になる事も。
全てが…。
いつの日か、彼を外へと導いた橋を。
いまは逆に辿って、生まれ育った島へ向かう。
どちらを向いても思い出ばかり。
島は何も変わっていなかった。
匂いも。
音も。
何もかも…。
変わっていないのに、違って見える。
彼は小さく息をついた。違って見える、その理由に気が付いて。

──何よりも変わったのは、俺なんだ。



主人公、行野光一は当たり前の人とはまるで違っていた。
その、人と違うということが、光一に居場所を失わせた。
それで生まれ育った島に帰ることになったのだった。



島の学校、「琴が丘」学園に通いながら、光一の新しい生活がスタートする。
人との出会い。
そして交わり。
目には見えない透明な壁の向こう側で。
光一は「居場所」を探していく。 そこは、人と違うという事が罪ではない。
そして、ひとりでは作れない。

──そんな場所。

(公式サイトより引用)

 

☆オープニングテーマ:硝子のLoneliness

www.youtube.com

 
曲:前澤寛之
編曲:藤田淳平
作詞:こだまさおり
歌唱:Riryka

☆エンド数、推奨攻略順(微ネタバレ)

エンドは各ヒロインごと1つ+全√クリア後のトゥルー(短編)で計6つ。
他、ヒロインを攻略し損ねた場合のBADがおまけ程度に。

内容的に一番重要度が高い(真相に近い)のは無月。
真相を最後まで知らずに読みたいのであれば彼女をラストに回すのが無難ですが、個人的には先に彼女のルートをやっておくとその後他ヒロインのルートを読み解く助けになるような気もします。
(トゥルーへの繋がり方は無月ラストが収まりが良い)

「人とは違う存在」という部分を一番掘り下げているように感じたのが紗由だったので、 彼女は比較的序盤に回すといいかもしれません。



追記にて、ネタバレを極力避けた感想。テーマ性の話をする関係で、完全に0ではないです。

 

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☆ネタバレを極力避けた感想
本作は、大まかには主人公が人間らしい心=「優しさ」を取り戻すための話であり、また、それによって掛け替えのない居場所を手にするまでの話でした。

物語の冒頭において、主人公の光一は他者への共感・同情が著しく欠如した人物として描写されています。
それは「人とは違う」存在であった彼が、それ故に他者との間に「透明な壁」を作っていたためだと言えるでしょう。

序盤の彼にとって世間一般の他者は「自分とは違う存在」、「理解しがたい(けれど正しいのは他者だと理解している)」存在です。
「人とは違う」存在を厭う世間一般がそうした存在に共感や同情を向けないのと同じように、光一もまた壁の向こう側の彼らをどこか遠い物として捉えていました。



そんな彼の態度は、しばしば本作のヒロインたちにも向けられます。

ヒロインたちの「他者のために無償で尽くす姿」や「誰かの悲しみを我が事のように思う姿」は、共感の欠けた光一からすれば理解しがたい(けれど一方で”世間一般”からして望ましい姿であると感じられる)ものでした。
優しさがあり、誰かを愛することのできるヒロインたちは、彼にとっては自分とは違う存在=壁の向こうの存在だったのです。

そうして彼女らを壁の向こうへ隔てながらも、一方で光一は彼女らの行動や感情を追うことで、自分の中に優しさが生まれることに期待します。
それは彼女たちの優しさに「共感したい」という欲求であり、言い換えれば「愛したい」という欲求であるようにも感じました。

”優しくなりたいという人の中には、既に優しさがある”という作中の弁を参照すれば、 彼女たちに「共感したい」と思う光一の中には初めから共感=愛があったと言えます。
だからこそ、彼は「違う相手に共感したい(同じ優しさを持ちたい)」と思うことができたのでしょう。



本作における優しさとは誰かを思って泣けることであり、その原動力は「愛」でした。
そのために必要なのが「共感」であり、それはまず誰かとの間にある「透明な壁」を取り払うところから始まります。

共感が愛を生み、愛が優しさを生むのです。
(逆説的に、共感のない愛=独りよがりな愛は愛ではなく、下記に言う幸せではない)



ひな曰く、「誰かを愛する」ことは「誰かに愛される」ことより幸せであり、また「誰も愛せない」ことこそが不幸でした。

誰も愛せない人は、誰も彼もを透明な壁の向こうに捉えています。
壁があり、それを取り払おうともしないが故に誰かからの愛が正しく伝わることはなく、またそれ故に結局はどうしようもなく「孤独」で「疎外された」状態です。

「誰かを愛すること」ができるのは「相手と自分の間に透明な壁がない」と思えるからであり、だからこそ「愛すること」こそが何よりの幸せ足り得るのではないでしょうか。



前述の通り、本作は光一が「優しさ」を取り戻すための話でした。

光一の凝り固まった心を揺らすべく、彼とヒロインらには様々な困難や悲しみが降りかかります。
それを乗り越え、「光一が愛した人のために心からの(完璧な)涙を流す」ことが彼の優しさを世界に証明する手段であり、またそれが彼らの物語をハッピーエンドへと収束される契機となっていました。

心の底から「誰かを愛する」ことが幸せに繋がると、本作は物語の構成をもってひなの理論を証明してくれているのです。



「人とは違う」と感じるとき、そこには透明な壁がある。
けれど、その向こうから手を伸ばしてくれる人もきっといる。

その誰かのために壁を取り払い心から泣くことができたなら、それは確かに幸福なのでしょう。

そんな彼らの物語を愛し、僅かでも涙を流せたことを、自分もまた幸福だと感じています。

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ちなみに一番好きなヒロインは紗由、ついでののかです。
共通時点ではののか一強だったのですが、個別ルートの内容(と主人公とのカップリング)が性癖に刺さりこうなりました。
紗由が光一と出会えてよかった、光一も紗由と出会えてよかったと心の底から湧きたてる良いルートでした。

他記事でだいたいお察しなのですが、ぱっと見似ていないけれど根っこや境遇が似た者同士の組み合わせがべらぼうに好きです。